マタハラ(マタニティハラスメント)

マタハラとは、マタニティハラスメントを略した言葉です。厚生労働省では以下のように定義して、妊娠・出産、子育てを理由とした嫌がらせや、降格・解雇・雇い止めなどの不利益な取り扱いを行うことを禁止しています。

職場における妊娠・出産・育児休業等に関するハラスメントとは、「職場」において行われる上司・同僚からの言動(妊娠・出産したこと、育児休業等の利用に関する言動)により、妊娠・出産した「女性労働者」や育児休業等を申出・取得した「男女労働者」等の就業環境が害されることです。

2016年の男女雇用機会均等法と育児・介護休業法の改正により、企業では妊娠・出産、育児休業、介護休業に関する上司・同僚からの職場でのハラスメントの防止措置を講じることが義務化されました。職場でのハラスメントには、以下の「制度等の利用への嫌がらせ型」と「状態への嫌がらせ型」があります。


マタニティハラスメントのない職場環境づくりを目指そう

職場でのハラスメントの種類

(1)制度等の利用への嫌がらせ型

  1. 制度等の利用を理由に解雇や不利益な取り扱いを示唆する言動
  2. 制度等の利用を阻害する言動
  3. 制度等の利用を理由に嫌がらせ等をする言動

 【具体的な嫌がらせ例】

  • 妊娠により立ち仕事を免除してもらっていることを理由に「あなたばかり座って仕事をしてずるい!」と、同僚からずっと仲間はずれにされ、仕事が手につかない
  • 男性労働者が育児休業を申し出たところ、上司から「男のくせに育休とるなんてありえない」と言われ、休業を断念せざるを得なくなった


(2)状態への嫌がらせ型

  1. 妊娠・出産等を理由に解雇その他不利益な取り扱いを示唆する言動
  2. 妊娠・出産等を理由に嫌がらせ等をする言動

 【具体的な嫌がらせ例】

  • 先輩が「就職したばかりのくせに妊娠して、産休・育休とろうなんてずうずうしい」と何度も言い、就業意欲が低下している


マタニティハラスメントの社会的認知の経緯

1999年に改正された男女雇用機会均等法には、セクシュアルハラスメントの法的な規制が設けられていましたが、マタニティハラスメントについては、2014年、広島県の理学療法士の女性が妊娠によって降格された事例で、男女雇用機会均等法に定められている「妊娠・出産による不利益取り扱いの禁止」に当たるかを争った裁判で、社会的に広く認知されたという経緯があります。最高裁判所はこれまで踏み込んでこなかった「男女雇用機会均等法違反」という判断を示し、画期的な判決であったと評価されています。

その後、国の政策審議でも「マタハラ」という表現が用いられ、2015年6月には、厚生労働省が「STOP!マタハラ」を掲げて「マタハラ防止」キャンペーンを実施しました。また、同年9月から10月にかけては、国による初めての実態調査も行われています。その調査でも、また2013年からマタニティハラスメントに関する意識調査を行っている日本労働組合総連合会の調査結果でも、「妊娠・出産・育児関連の権利を主張しづらくする発言」が職場に存在していることが明らかになりました。


マタニティハラスメント防止の本質的な課題

厚生労働省は、マタニティハラスメント防止措置の具体的なガイドラインとして、「事業主が職場における妊娠、出産等に関する言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置についての指針(2017年1月1日施行)」を出しています。このガイドラインには、これまで問題化されにくかったさまざまなハラスメント行為の具体例が示されています。

マタニティハラスメント問題の社会的認知は広がりましたが、職場においては、先に法規制されてきたセクシュアルハラスメント同様、「どのような行為や言動がマタニティハラスメントに当たるのか」ということに目が行きがちです。ハラスメントとは、加害者側の意図に関係なく、相手を不快にさせたり尊厳を傷つけたりする行為であるため、同じ行為でも、その行為を受けた相手の感じ方が異なることがあります。そのため、職場においては、ハラスメントがどのような行為や言動であるかを定めて、その行為や言動を禁止することを重視するのではなく、妊娠・出産を経験する女性を含め、労働者全員が働きやすい職場環境づくりを行い、男女ともに働き方を見直す視点が必要とされます。


マタニティハラスメントのない職場環境づくりのために

マタニティハラスメントのない、労働者全員が働きやすい職場環境をつくるために、企業ではどのような対策を講じていけばよいでしょうか?

これまでは女性の就業継続率の低さなどから、妊娠・出産を経験する女性の就業環境や配慮すべき事柄について、職場の理解が十分ではなかったと考えられます。また、妊娠・出産、子育てを理由とした嫌がらせが以前からあったものの、加害者がその行為をマタニティハラスメントであると認識しておらず、意図せずにハラスメントを行う職場環境が放置されてきたことも多いのではないでしょうか。

今後は、マタニティハラスメントを含めた職場のハラスメントについて学ぶ教育機会を設け、労働者自身の職場のハラスメントへの理解を深めることが重要です。特に、妊娠・出産を経験する労働者の職場の上司は、妊娠・出産後に仕事と育児の両立を目指す労働者をマネジメントする立場であり、よりいっそう高いマネジメント能力が求められます。

厚生労働省では、「職場におけるハラスメント対策マニュアル及び社内研修資料」など職場でハラスメント問題に取り組みやすいツールを準備していますので、これらを積極的に活用することも有効でしょう。


公式アカウントをフォローして
記事をチェックしよう

この記事を書いた人

北川佳寿美

精神保健福祉士、キャリアコンサルタント

アパレル、百貨店を経て、2002年精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー国家資格)取得。一貫して「働く人のこころの健康と働き方支援」に関わる。EAP(従業員支援プログラム)、医療機関を経て、2015年メンタルヘルスケアとキャリア開発支援のコンサルタント・研修講師・カウンセラーとして独立。

育児短時間勤務

次回更新をお待ち下さい。

パワハラ(パワーハラスメント)

これ以前の投稿はありません。

人事必修ワード(採用・配置)一覧ページに戻る