育児短時間勤務

育児短時間勤務とは、3歳未満の子どもを養育する労働者に対して、1日の労働時間を原則として6時間とする措置を含む短時間勤務制度です。育児・介護休業法の2009年の法改正で、「働きながら育児をすることを容易にする」ことを目的として、短時間勤務制度の設置が事業主に義務づけられました。これまで選択的措置義務の一つであった短時間勤務制度は労働者からのニーズも高く、法改正による義務化は、仕事と家庭の両立の可能性を広げ、子どもを養育する労働者のワーク・ライフ・バランス実現に寄与していると考えられます。


育児短時間勤務による柔軟な働き方で、出産・育児のライフイベントを“当たり前”に


育児短時間勤務義務化の経緯

女性が出産や育児を理由に離職する傾向は、2000年代前半までほとんど変化が見られませんでした。1985年の男女雇用機会均等法以降、1991年の育児休業等に関する法律、1995年の育児・介護休業法と、仕事と家庭を両立できるようにするための法律や制度が作られてきましたが、子どもを持つ女性の多くにとって就業継続は大変厳しいものでした。

2009年の育児・介護休業法の改正前は、3歳未満の子どもを養育する労働者に対し、短時間勤務制度、フレックスタイム制度、始業・終業時刻の繰り上げ・繰り下げ、所定外労働をさせない制度、託児施設の設置運営、その他これに準ずる便宜の中から一つを選択して制度を設けることが事業主の義務とされていました。その中でも短時間勤務制度は、法律で義務化される前から比較的導入率の高い制度であり、その利用者も増加傾向にありました。
※参考:育児・介護休業法が 改正されます! - 厚生労働省(2009年)

その後、2017年1月の改正法施行では、これまで短時間勤務制度を利用できなかった有期契約のパート・派遣労働者に対する利用条件が緩和されるなど、雇用形態にかかわらず、育児をする労働者が長期にわたって働くことを前提とした制度として定着しつつあります。


育児短時間勤務の効果と制度導入に伴う課題

2009年改正の育児・介護休業法で短時間勤務制度が義務化されたことなどをきっかけに、正社員を中心に女性の就業継続が増加しています。

国立社会保障・人口問題研究所の調査によると、「育児休業を取得して就業継続した女性」の割合が、1985~1989年の5年間では5.7%だったものが、2010~2014年は28.3%へと大きく上昇していることが分かります。特に、2005~2009年から義務化後の2010~2014年の増加は顕著です。

短時間勤務制度をはじめとした仕事と家庭の両立支援に関する制度の導入や拡充は、子育て中の女性だけでなく、企業にも良い効果をもたらしています。特に、大企業や女性の多い業種・職種等では、短時間勤務制度が優秀な人材の獲得や、知識や技能を持った人材の離職防止、働きやすい職場としての対外的なPRとなっています。

現在は、法律を上回る条件の短時間勤務制度を導入する企業も増え、仕事と家庭の両立支援に関する企業の取り組みは前進してきたと評価できます。しかし一方で、制度導入に伴う課題も見えてきました。特に、女性のキャリア開発の視点からの課題として、短時間勤務により変化した業務内容が、本人のやりたい業務と合致しないことが挙げられます。

厚生労働省が行った2016年度の「仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業」の調査結果によると、短時間勤務についての希望合致度について、「女性・正社員」の13.5%、「女性・非正社員」の10.6%が「自分の希望とは違っており不満だった」と回答しています。
※参考:平成28年度 仕事と家庭の両立に関する実態把握のための調査研究事業報告書

短時間勤務による業務の変化の希望合致度

育児短時間勤務に伴う課題への対策のポイント

制度導入の課題として、女性のキャリア開発の視点からの課題のほかに、制度利用者を支援する周囲の労働者の負担増加や、男性の利用率の低さなども挙げられます。これら短時間勤務制度による課題の解決には、職場の上司のマネジメントが大きな鍵となります。

出産後に復職する労働者の多くは、不安や焦りを抱えて職場に戻ってきます。しかし、職場の上司の多くは、復職する労働者がどのような思いや課題を抱えて仕事に臨んでいるかを理解できず、仕事と家庭を両立する労働者を戦力外と見てしまうケースが散見されます。

職場の上司には、復職する労働者の置かれた状況を理解したマネジメントが求められます。育児短時間勤務を利用する労働者の職場復帰に対する不安や焦りを拭い去り、仕事に対する意欲ややりがいを喚起することが必要です。そのためには、職場全体で仕事と家庭を両立する労働者の支援体制の構築が欠かせません。育児休業からの復職前後には、人事部と復職者だけでなく、職場の上司も交えた定期的なコミュニケーションの仕組みを整えることが肝要です。短時間勤務制度利用に伴う業務量の調整や処遇、人事評価面における課題を解決しなければなりません。同時に、制度利用者を支援する周囲の労働者への負担についても配慮し、男性も含めて制度利用の希望者が利用しやすい体制を構築していくことが重要です。


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この記事を書いた人

北川佳寿美

精神保健福祉士、キャリアコンサルタント

アパレル、百貨店を経て、2002年精神保健福祉士(精神科ソーシャルワーカー国家資格)取得。一貫して「働く人のこころの健康と働き方支援」に関わる。EAP(従業員支援プログラム)、医療機関を経て、2015年メンタルヘルスケアとキャリア開発支援のコンサルタント・研修講師・カウンセラーとして独立。

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