嘱託社員

嘱託社員とは、有期の労働契約を結んで雇用される非正規雇用の形態の一つです。嘱託社員の法律による明確な定義はなく、その扱いや給与などの処遇・雇用条件は企業によって異なります。医師や弁護士など高度な知識と能力を有する人材を嘱託社員と呼ぶこともありますが、一般的には、定年後に再雇用する人を嘱託社員と呼ぶことが大半です。


定年後再雇用制度として活用が広がる嘱託社員

定年後再雇用の嘱託社員

従来、定年年齢に達した社員のうち、優れた技能・能力や貴重な経験を有する社員を会社として活用したい場合に、嘱託社員という形態で再雇用するケースがありました。高年齢者雇用安定法の改正により2013年4月1日から希望者全員の雇用確保が義務づけられたことで、定年後再雇用制度のもと嘱託社員としての雇用・活用が拡大しています。


嘱託社員の給与など処遇について

一般的に、定年退職を迎えた再雇用の嘱託社員契約では、正社員の時よりも収入が下がる場合が多くなります。ただし、再雇用後も正社員の時とまったく同じ仕事をする場合は、「嘱託社員」という地位だけで給与(賃金)を下げることは法律上認められません。2016年に横浜の運送会社が再雇用した嘱託社員が、正社員の時と業務内容が同じなのに給与が異なるのは労働契約法20条(有期労働者への不合理な労働条件の禁止)違反だと訴えたケースでは、東京地裁が請求通り正社員との給与の差額計約400万円を支払うよう運送会社に命じた事例があります。

企業としては、希望者全員の雇用確保を確保し、尚かつ正社員時と同じ給与を支払っていては人件費が増大し、業績にも影響を及ぼしかねません。そのため企業は、定年再雇用で役職を外れることや、責任や職務が限定的になること、勤務日数や時間を減ることなどを根拠に給与額を正社員時代より下げるわけですが、再就職する側もあえてフルタイムの勤務を望まないケースが多いことから、そのような対応が一般的となっています。 

一方、最近の人材不足から、嘱託社員を「義務で雇用確保しなければならない対象」ではなく「戦力」として確保したいと考える企業も出てきており、嘱託社員のニーズに合わせた短時間勤務などより柔軟な労働条件をとりながらも、モチベーションを高めるべく報酬を高い水準に設定する企業も増えてきています。 


嘱託社員を雇用する際の留意点

定年退職者を嘱託社員として再雇用する際には、企業は希望者全員に対して65歳までの雇用機会を与える必要があること、給与、賞与などの労働条件は正社員の時と同じでなくてもよいが、正社員と比較し不合理な条件や処遇の差は禁止されることを留意する必要があります。


雇用契約の締結と嘱託社員就業規則の作成

嘱託社員として再雇用する場合は、嘱託社員契約を締結します。雇用期間以外にも職務内容、就業場所、就業時間、休日・休暇、給与(賃金)、契約更新・解除、社会保険などを定めます。嘱託社員契約の締結のほか、嘱託社員就業規則も作成しておくことが推奨されます。

なお、2013年4月の改正労働契約法の施行により、「無期労働契約転換制度(無期転換ルール)」が導入され、有期労働契約が反復更新されて契約期間が通算5年を超えたときには、労働者の申し込みにより無期労働契約に転換されることとなりました。
※参考:無期転換の概要 事業主や人事労務担当者の方向け「有期契約労働者の無期転換サイト」 

ただし、継続雇用の高齢者には無期転換ルールが適用されない特例があります。この特例の適用を受けるためには、対象者に行う雇用管理に関する措置を定めたうえで申請を行い、都道府県労働局長の認定を受ける必要があります。 


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この記事を書いた人

堀内泰利

東京経済大学 特任講師/元NEC 人事部キャリアカウンセラー

米国ピッツバーグ大学経営大学院修了(MBA)、筑波大学大学院博士課程修了。 日本電気株式会社(NEC)にて、本社、北米現地法人等での人事・人材開発の業務とマネジメントに長く携わる。 全社の人事制度・人材育成制度の構築・改革、キャリア形成支援制度の立ち上げなども担当。2014年4月から現職。

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