フレックスタイム制

フレックスタイム制とは、月の総労働時間をあらかじめ定めておき、その範囲内で各日の始業および終業時刻を労働者が自主的に選択して働くという制度で、変形労働時間制の一つとなります。この制度の目的は、労働者の生活と業務の調和を図りつつ、効率的に働くという狙いがあります。

コアタイムと呼ばれる必ず勤務すべき時間帯と、時間帯内であれば出社、退社時間を自由に選択できるフレキシブルタイムの2つに分ける方法が一般的です。しかし、コアタイムは必ず設ける必要はないので、全てをフレキシブルタイムにすることも可能です。


フレックスタイム制とは?働き方改革を考える企業が押さえるポイント


フレックスタイム制の背景

日本国内のフレックスタイム制の導入は、1988年4月の労働基準法改正からとなります。1980年代、長時間労働、過労死という社会問題に関する記事が新聞、雑誌を賑わせていました。そこで、労働時間短縮の処置として導入されたのが、フレックスタイム制です。労働時間の規制を大きく緩和し、労働に対する柔軟な制度設定を合法的に可能としました。

さらに、2018年6月29日に成立した「働き方改革推進法」では、フレックスタイム制が見直しされ、2019年4月から新しいフレックスタイム制がはじまります。


フレックスタイム制採用に必要な2つの手続き

1.就業規則に規定

制度導入のために、「始業、終業の時刻を労働者の決定に委ねる」という旨の規則を定める必要があります。この場合、始業と終業の両方を労働者の決定に委ねなければ、フレックスタイム制にはなりません。

また、労使協定で定めるとされている清算期間と総労働時間は、労働者の始業、終業時刻に係る事項でもあるため、就業規則で定める必要があります。

2.労使協定を締結

労使協定でフレックスタイム制の基本的枠組みを定める必要があります。労働者の過半数で組織する労働組合、または労働者の代表者と締結をおこないます。

労使協定の基本的枠組み
1.対象となる労働者の範囲 フレックスタイム制を適用する範囲を明確にする必要があります。
全労働者、特定の職種の労働者、個人ごと、課ごと、グループごとなど様々な範囲が考えられます。
2.清算期間 労働契約上、労働者が労働すべき時間を定める期間で、1ヶ月以内とされています。
月単位、週単位なども可能です。また清算期間は長さ、起算日を定める必要があります。
例えば、毎月1日から月末まで、と定めなければなりません。
3.清算期間における総労働時間 労働契約上の労働者が清算期間内において労働すべき時間として定められている時間、所定労働時間のことになります。
清算期間を平均し、1週間の労働時間が法定労働時間の範囲内となるよう定める必要があります。
4.標準となる1日の労働時間 清算期間内における総労働時間を、その期間における所定労働日数で割ったものになります。
また、フレックスタイム制を採用している労働者が清算期間内に有給休暇を取得した場合、標準となる労働時間を労働したとして取り扱います。
5.コアタイム、フレキシブルタイムの開始および終了の時刻 コアタイム、フレキシブルタイムと設ける場合、必ず労使協定で開始および終了時刻を定めること、とされています。


残業および労働時間の持ち越しについて

■残業代について

フレックスタイム制を採用している場合、時間外労働であるかどうかについては1日単位では判断せず、清算期間を単位としてのみ判断します。36協定についても1日について延長可能な時間を協定する必要はなく、清算期間を通算して時間外労働をおこなえる時間を協定すれば足ります。

ただし、労働者が深夜に残業した場合、割増賃金の支払いが必要となります。また、始業時間に関係なく、社員が深夜帯に働いている場合も深夜割増賃金が必要となります。

■労働時間の持ち越しについて

実際に労働した時間が、清算期間に比べ過不足が発生した場合の繰り越しについては次の通りになります。

1.労働時間に過剰が生じた場合
定められた総労働時間を超えて働いた時間分の賃金を次の清算期間に繰り越すことは、労働の対価の一部が賃金支払い日に支払われないこととなり、労働基準法第24条に違反します。そのため、過剰分は当該の清算期間内で清算しなくてはなりません。

2.労働時間に不足が生じた場合
総労働時間として定められた時間分に達せず、不足した時間分の賃金については2通りの方法で調整可能です。翌月の総労働時間の総枠範囲内で繰り越す方法と、不足分をカットして支払う方法になります。ただし繰り越す場合、法定労働時間の総枠を超えて労働することを予定するような制度は不適当となります。

例:繰り越し精算

例:賃金のカット

出典:厚生労働省「4 労働時間に過不足が生じた場合について」


フレックスタイム制導入による企業のメリット

■残業を削減できる

フレックスタイム制は月の総労働時間の決定、採用する範囲の決定などを規定する必要があります。そのため、余剰な残業の発生を防ぐ、部署ごとの労働時間の調整などが可能となります。また事業主側としても、清算期間における総労働時間に対し労働時間の不足が生じた場合の賃金カットなど、コストの調整がおこないやすいというメリットもあります。

■人材の確保ができる

フレックスタイム制では始業、終業時間を労働者が自由に定められます。そのため、朝の通勤ラッシュ、退勤時の混雑を避ける、子どものお見送りあるいはお迎えなどの時間を確保できます。労働者ごとの都合や働き方に合わせた環境を提供できるため、企業をアピールする材料になりえます。

また時間の調整が効くことから、育児や介護などの家庭の事情で離職せざるを得ない優秀な人材を引き留めることも可能です。


フレックスタイムの見直しについて

2018年6月に成立した働き方改革の一環で、フレックスタイム制の内容が見直されました。変更点は次の通りです。

期日 2019年3月31日まで 2019年4月1日から
清算期間の上限の延長 1ヶ月 3ヶ月
週所定労働時間の上限規制 なし 50時間
労使協定届出義務 なし (清算期間が1カ月を超える場合)あり

清算期間の上限が3ヶ月に延長となりました。これにより連続する3ヶ月間において、繁忙期の所定労働時間を増やし、閑散期では減らすといった時間調整が可能になります。また、これまで定めのなかった週所定労働時間の上限規制が50時間となりました。このため、1日あたり平均10時間以上の労働は不可能となります。さらに清算期間が1ヶ月を超える場合、労使協定を届け出る義務が発生するようになります。

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この記事を書いた人

hutas編集部

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