年俸制

年俸制とは、従業員に支払う基本的な賃金を1年分まとめて提示する賃金制度のことです。賃金の決定には従業員個人の1年間の業績が重要視されますが、企業や部門などの集団業績も加味されることがあります。

なお、賃金の支払いは、毎月1回以上、一定の期日を定めて行わなければならないことが労働基準法で定められています。そのため、賃金を決定するのは年に1回ですが、支払いは年俸を12回(またはそれ以上)に分割して毎月支払うのが通常です。

年俸制においても、実際の労働時間が法定労働時間を超える場合は、時間外手当を支払わなければなりません(ただし、管理監督者など労働基準法第41条に規定された者は除く)。なお、割増賃金を必要としない従業員であっても、労働時間は把握しておかなければなりません。また、裁量労働制などのみなし労働時間制の場合には、実際の労働時間に関係なく、みなし時間に応じた年俸を設定する必要があります。なお、年俸制は成果に応じて賃金が決まるため、業績によっては賃下げとなる可能性もあります。


従業員の「成果」を適切に測れるかどうかが鍵


職能給・年功給から成果給へ

日本では高度経済成長期以降、「職能資格制度」が大企業を中心に人事制度の中核をなす制度として用いられてきました。職能資格とは、従業員の職務遂行能力にランクをつけて分類したものです。この制度の下では、勤続年数に基づく年功給や職能給をベースとして給与が支払われます。

しかし職能資格制度は終身雇用を前提とした制度であり、高齢化社会の進行などで終身雇用が崩れるのに伴って維持するのが難しくなりました。バブル崩壊後から2000年にかけて大企業を中心に成果主義が導入され、賃金・人事処遇施策の変化で年功給から成果給へと変わりました。それに伴い、年俸制は管理職を中心に導入されました。


年俸制導入は二極化の時代へ

大企業では年俸制の対象者は管理職にとどまる場合が多く、一般の従業員への導入が進んでいないのが現状です。一方で、雇用を増やしているインターネット業界や、急成長志向のベンチャー企業、成果重視型の企業では、新入社員から年俸制が取り入れられています。入社時から賃金に差がある場合もあります。

また、文部科学省も国公立大学の教員に対し年俸制の導入を決めました。しかし、2013年に発表したものの導入は進んでいないのが現状です。これを受けて、2018年に「統合イノベーション戦略」が閣議決定され、年俸制の導入が再度推し進められる見通しです。


年俸制とはこういうものである、という法的な定義はありません。ただ、導入・運用に当たっては労働基準法・労働契約法の知識は必要です。

年俸制のポイントの一つとして、「成果に応じて減額も可能である」という点が挙げられます。職能給・年功給の場合、一人ひとりの従業員が上げた成果とその総和である業績の変動にかかわらず給与が決まりますが、年俸制ならある程度の調整がしやすいことが導入する会社にとってのメリットとなります。

ただし、業績が芳しくないからとむやみに年俸額を下げてよいわけではありません。その変動幅についての基準につて法律に定めがあるわけではありませんが、過去の裁判例によると、有効とされる場合の減額幅は前年の10%程度だと考えられます。

また、年俸額は会社と従業員の間の交渉により決まりますが、その交渉のベースとなる「評価」の基準は多くの場合、会社の裁量で決まることが多いでしょう。年俸制がうまく回るためには、従業員がその評価体系について納得できるものであることが最も重要です。

そのため、企業や上司が従業員の成果をサポートできるような管理体制を取り入れる必要があります。具体的には、ミッション(役割)の明確化、人材育成、従業員の能力やモチベーションの管理・支援、仕事に対する動機づけなどです。また、評価に納得できない場合、会社に対して異議を申し立てる機会を設けておくことも必要です。年俸制を導入する場合は、そうした人事制度全体の見直しも視野に入れたうえで賃金・人事処遇面の変更を検討することが求められます。


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この記事を書いた人

谷口ちさ

キャリアカウンセラー、研修講師

2002年日本IBM研修サービス(株) 入社。IT研修講師、人材開発研修講師、ならびにIBMグループ新入社員研修企画・運営・実施を担当。 (株)ファミリーマート、(株)大地を守る会(現・オイシックス・ラ・大地(株))にて社員研修・採用を担当。

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