労働災害

労働災害(労災)とは、労働者が業務上で被った負傷、疾病、障害または死亡のことをいいます。労働者が安全かつ衛生的な環境で働けるよう、労働基準法(労基法)から独立した労働安全衛生法(安衛法)が定められ、各種の安全衛生に関する規制が設けられています。

また、労基法で使用者の無過失責任(故意・過失がなくても責任を負うこと)として補償義務が定められていますが、場合によっては資力の点で問題が生じる可能性があります。そこで、労働者災害補償保険法(労災保険法)によって、労災保険制度が整備され、通勤災害まで補償範囲が拡大されています。そのため「労災」が広義に使われる場合は、通勤災害も含まれることがあります。


労働災害の現状から対策まで


増加傾向にある労働災害。過労死・うつ病も増加

労働災害による被災者数について、厚生労働省の「平成29年労働災害発生状況の分析等」によると、死亡災害は978人、休業4日以上の死傷災害は120,460人で、ともに前年を上回っています。労働災害の増加にはさまざまな背景がありますが、建設需要の増加や経済の活性化、経験豊富な労働者が不足していることなどが原因として考えられます。

災害の発生状況としては、建設業では墜落・転落事故が多く、陸上貨物運送事業では交通事故(道路)が占める割合が多くなっています。第三次産業では、転倒事故や腰痛などが多くなっています。


従来型の労働災害だけでなく、過労死・過労自殺、メンタルヘルス不調が増加

近年、長時間労働による過労死等やうつ病等が増加しており、脳・心臓疾患に関する事案、精神障がいに関する事案ともに労災の請求件数が増加しています。いわゆる「事故」のような従来型の労働災害への対策はもちろん、過労死等やうつ病への対策も急務です。

過労死は働き過ぎによって、脳・心臓疾患などを発症し死に至るものです。過労自殺は、働き過ぎでうつ病などを発症し、自殺に至るものです。そのほかにも職場でのセクシャルハラスメント(セクハラ)によって精神障がいを発症するケースもあります。

実際の事例でも、時間外労働100時間を超える長時間労働やパワーハラスメント(パワハラ)を苦にして過労自殺した件が労災認定を受けたことがありました。


職場の安全衛生のために求められる活動とは?メンタルヘルスケアも含めた総合対策を

1.経営トップの意識が重要

労働災害防止のためには、各企業のトップが安全で衛生的な職場環境を整備する方針を表明し、その実施を徹底する必要があります。

2.人事労務担当者が行うべきこと

安衛法等の関係法令に基づき、安全管理者・衛生管理者等の法定の管理者が専任されているか、活動実態があるかについての確認を定期的に行います。また、常時使用する労働者が50人以上の事業場では、安全委員会、衛生委員会の設置が安衛法により義務づけられています。安全委員会についてのみ、業種によっては100人以上の事業場が設置義務の対象となります。両委員会を統合した安全衛生委員会の設置でも可とされています。
さらに、定期健康診断の実施や、過重労働防止のための勤怠時間状況の確認も欠かせません。

3.職場内の危険の発見・改善と、労働者の意識啓発を

事故は、職場内外の危険と労働者の意識が相互に作用して起きるものです。まず、職場内のリスクアセスメントを行い、危険な場所や作業内容が確認されたら、早急に対処しましょう。労働者の意識改善は、職場内だけでなく職場外の事故防止にも大きな効果を発揮します。例えば、職場内では転倒事故や腰痛防止のための体操の奨励、職場外では交通事故への注意喚起など、実際の労働災害の発生例に応じた意識啓発を行うことがリスク軽減につながります。

4.ストレスチェック制度を活用したメンタルヘルス対策

従業員50人以上の事業場では、医師等が社員の心理的な負担を把握するための検査(ストレスチェック)を実施しなければなりません。従業員50人未満の事業場でも、厚生労働省の「労働者の心の健康の保持増進のための指針」等を参考に、メンタルヘルス不調者へのケアを実施することで、職場のストレスに起因するうつ病等の防止に努めることが求められます。


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この記事を書いた人

小川輝行

特定社会保険労務士、ファイナンシャルプランナー

法政大学法学部法律学科卒業。現在は社会保険労務士法人シグナルのアドバイザーとして従事。 社会保険労務士として、主に就業規則作成、労使トラブル予防・解決の相談に対応。社会保険労務士試験受験用の問題集や実務書の作成スタッフも担当。

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