配偶者控除

課税対象となる所得を課税所得と言いますが、給与所得者がこの課税所得を計算する際に、収入から控除することができる所得控除の一つが配偶者控除です。

配偶者控除の金額は、満額で38万円(配偶者が70歳未満の場合。以下同様)です。配偶者控除には年収が103万円以下の配偶者を対象とした「配偶者控除」と、年収103万円超~201万5,999円以下の配偶者を対象とする「配偶者特別控除」があります。

従来は年収103万円を超えると満額の配偶者控除を受けられなくなるため、「103万円の壁」といわれていました。2017年に配偶者控除に関する法改正があり、2018年1月以降は、年収150万円まで満額38万円の控除が受けられるようになりました。年収150万円を超えると控除額が段階的に減額され、年収が201万5,999円を超えた時点で控除額は0円となります。

注意したいのは、仮に世帯の中で夫が主たる収入を得る者である場合に、配偶者控除は配偶者(妻)の収入から控除されるのではなく、配偶者を扶養する納税者(夫)の収入から控除されるものであるという点です。そのため配偶者控除が受けられる要件として、配偶者の年収だけでなく納税者(夫)の年収もチェックが必要です。


漂流する配偶者控除に関する議論に正解はあるのか?税収中立と女性活躍の行方


配偶者控除は専業主婦の優遇策が出発点

配偶者控除は1961年に創設されました。当時は専業主婦世帯が圧倒的に多数を占めていました。また就労している主婦であっても、納税者である夫を助けるために家計補助的に働くケースが多く、収入額はさほど多くはありませんでした。配偶者控除は、そういった時代に働く主婦を評価する形で創設されました。そのため高い報酬を外で得ている場合は、配偶者控除の対象にはならないのです。

配偶者控除はその制度趣旨からも分かるように、今日のように女性が外で働くことは想定しておらず、逆に年収103万円を超えないように働く、つまり働き損をしないように就労調整を行うインセンティブになってしまいました。

「年収103万円の壁」を緩和する目的で1987年に配偶者特別控除も創設されました。配偶者特別控除は、年収103万円を超えてもいきなり配偶者控除が認められなくなるのではなく、一定の年収(141万円)までは段階的に控除を認めることで、世帯全体としての手取り収入が逆転しないように図られました。


女性活躍社会に向けて

2018年1月から配偶者特別控除の改正により、「年収103万円」の壁は事実上なくなっていますが、企業が支給する家族手当の支給基準が年収103万円以下としている会社が多く、女性の就労調整行動は依然として残りました。

共働き世帯が専業主婦世帯の1.6倍に上るといわれるなど、社会構造が変化しているわりには、「女性はパートタイム労働などへの従事に限られている」のは配偶者控除が問題ではないのかという議論が起き、配偶者控除の見直し・廃止の検討が行われるようになりました。2013年6月の「日本再興戦略」では、働き方の選択に関して中立的な税制・社会保障制度の検討を行うことが決まり、以後、さまざまな場で議論が進みました。

一時は配偶者控除の廃止と併せ、夫婦なら働き方を問わず一定額の控除を認める「夫婦控除」の創設が検討されたこともありました。しかし夫婦控除の導入による税収の落ち込みが予想され、また配偶者控除の廃止で増税となる世帯からの反発もあり、結局、配偶者控除・配偶者特別控除制度は維持されることになりました。


2018年1月から配偶者控除、配偶者特別控除の取り扱いが大きく変更になっています。まずこれまでは制限がなかった配偶者控除を受ける本人(世帯の中で主たる収入を得る者。多くの場合は夫)の年収に制限が設けられるようになりました。

具体的には夫の所得が1,000万円(年収1,220万円)を超えると、配偶者控除は一切受けることができなくなりました。一方で、夫の所得が900万円(年収1,120万円)以下であれば、配偶者(妻)の年収が150万円までなら配偶者控除と同額(38万円)の配偶者特別控除が受けられるようになりました。要するに「年収103万円の壁」が「年収150万円の壁」になったのです。

これでは税制が複雑になっただけで、女性の就労調整という問題の本質はあまり変わっていないとする見方もあります。


家族手当の行方に注目

配偶者がいる社員に対して、家族手当や配偶者手当の名称で手当を支給している会社は依然多いです。またこれらの会社では、所得税法上の控除対象配偶者や健康保険法上の被扶養者であることを支給要件としていることが多く、家族手当(配偶者手当)の存在も女性の社会進出を妨げているのではないかという議論もあります。そこで大手企業の中では、配偶者に対する手当を廃止し、代わりに子どもに対する家族手当に切り替える会社が出ています。今後は配偶者を対象とした手当を廃止する企業の動きが加速すると考えられます。


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この記事を書いた人

本田和盛

あした葉経営労務研究所 代表 社会保険労務士

コマツにて法人営業、販売企画、人材育成などの業務を担当後、人事・労務のプロフェッショナルを目指し退職。社会保険労務士として独立開業後10年間 で、200社を超える企業で人事・労務・採用に関するコンサルティングを行う。

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