メンター制度

メンター制度とは、経験豊かな人が未熟な人に対し、一定期間継続的に成長を支援する制度です。支援する側をメンター、支援される側をメンティー(またはプロテジェ)と呼びます。

企業においては、新入社員や新任管理職を育成するためにメンター制度が取り入れられてきました。メンターは上司以外の者がアサインされ、メンターとメンティーは通常、一対一の関係を築きます。メンターはメンティーに対し、職務上の目標達成などを支援するだけでなく、職務以外の領域も含む心理・社会的な側面からも支援することがあります。さらに、継続的な関係性の中で、メンターがメンティーの役割モデルとなることもあります。

また、メンターにとっても、マネジメント能力や人材育成能力の向上などのメリットがあります。しかし、どのような支援が提供されるかは、メンターとメンティーの関係性によるところが多く、メンター制度が機能するには双方の効果的なコミュニケーションスキルが要求されます。


メンター制度は「従業員が支え合う風土をつくる」制度


組織的な育成システムとしてのメンター制度

バブル崩壊をきっかけに日本企業の業績は伸び悩みの時代へと突入し、企業は従来の年功・職能主義から成果主義へと移行していきました。これにより、能力開発の代表的手段であった「計画的OJT(On the Job Training)」を実施する企業が減少し、上司と部下、あるいは従業員間のコミュニケーションも減少しました。このような状況は、従業員の孤立やメンタル不調などを引き起こし、特に若手従業員の早期離職の原因ともいわれました。

こうした背景から、組織的な育成システムの導入が求められるようになり、その制度に「相談」が組み込まれているメンター制度に注目が集まりました。特に、早期戦力化や早期離職防止を目的として、新入社員育成に多く取り入れられています。


2013年、厚生労働省は女性社員の活躍を推進するための「メンター制度・ロールモデル普及マニュアル」を作成しました。こうした流れもあり、近年では、女性社員の仕事の悩みに男性幹部社員が応えるメンター制度を取り入れている企業もあります。もともとは女性の活躍支援が目的ですが、女性特有の課題を男性社員が深く理解できるようになるという副次的効果も生まれています。

女性向けの社外メンターサービスも登場しています。育児をしながら、特に管理職として働く女性のロールモデルはまだ少なく、社内に相談相手がいない場合などに利用されています。

ある女子大学では、女性の新たなキャリア観を醸成するために「社会人メンター制度」を取り入れています。社会人が学生にキャリアプランを助言することで、従来の「良妻賢母」にはとらわれない新たなロールモデルを示すことが狙いです。


長期的展望を持って制度の導入・運営を

日本企業においては長きにわたり職能制が取り入れられてきたため、従業員の職務範囲(ジョブ・ディスクリプション)が明確になっていないことがあります。そのため、メンター制度が「仕事」として理解されないケースが見受けられます。何かの業務のついでに行われる、実施すべきタイミングで面談(メンタリング)が行われない、それが続いてメンター制度自体が形骸化する、などの事例があります。メンター制度が機能するためには制度の意義や導入の狙い、メンターとして活動するメリットなどを従業員に周知することが求められます。また、メンター制度を浸透させるためには、シンプルで分かりやすい制度設計を考慮する必要があります。

制度導入後には、メンターの能力不足によるトラブルや、メンターとメンティーの間の葛藤などが起きることがあります。メンターもメンティーも人間ですから、人間関係の不和が起こりえることを前提として施策を考えておくことが賢明です。メンター向けの定期的な研修のみならず、日常的にメンターをフォローするための施策も盛り込んでおくとよいでしょう。

メンター制度の恩恵を受けたメンティーは、その後、メンターとしても実力を発揮しやすいといわれています。メンター制度が組織文化として定着することで、制度によらずとも人を育成しようという風土が世代継承していきます。メンター制度については、短期的な成果を求めるよりも、適宜修正を加えるなどしながら長期的な展望を持って制度導入・運営していくことが効果的でしょう。



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この記事を書いた人

谷口ちさ

キャリアカウンセラー、研修講師

2002年日本IBM研修サービス(株) 入社。IT研修講師、人材開発研修講師、ならびにIBMグループ新入社員研修企画・運営・実施を担当。 (株)ファミリーマート、(株)大地を守る会(現・オイシックス・ラ・大地(株))にて社員研修・採用を担当。

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