【まとめ】社員の「副業解禁」要望が多いとき、企業・人事が取り組むことは?

副業禁止から副業管理へ

 「副業」に法律上決まった定義はありませんが、一般的には、どこかの企業に勤めて主たる「本業」を持つ人が、それとは別にもう一つの仕事をして収入を得ることを副業といいます。  

これまで多くの日本の企業が、社員の副業を禁止してきました。しかし、副業・兼業の推進が政府による「働き方改革」の一要素に盛り込まれて以降、副業解禁の機運が徐々に高まりつつあります。  

そうした流れの中、企業には、「副業は適切に把握して管理するもの」という考えに変わっていくことが求められています。社員が副業をすることによって起こりうるトラブルを未然に防ぎ、副業によるメリットを社員も企業も享受することが望ましいあり方といえます。  

では、現在副業を禁止している会社の人事担当者が、社員から「うちも副業解禁してほしい」「私も副業したい」といわれた場合、どうすればいいでしょうか。あるいは、経営陣から「わが社も副業解禁しよう」という意向が降りてきたら、何から考え、どのような手順で「副業解禁」を進めればよいでしょうか。  

【まとめ】社員の「副業解禁」要望が多いとき、企業・人事が取り組むことは?

目次

  1. 1. 副業の形はさまざま

  2. 2. 社員の副業を、自社にとってのメリットにつなげるために考えておくべきこと

  3. 3. 就業規則の改定が必要

  4. 4. 副業解禁に当たっての懸念点とその対応

  5. 5. まとめ

副業の形はさまざま

副業の形態は、「企業に雇用される」「自分で事業を営む」の2つのタイプに大別できるでしょう。

種類 企業で働く 自分で事業を営む
内容 ・企業と無期または有期の雇用契約を結んで働く

(パートやアルバイトもこれに当たります)
・個人事業主のフリーランスとして業務委託で仕事を請け負う
・自分で商売をする(いわゆる自営業)

など

(ウェブサイトをつくってアフィリエイトで収入を得る、雑貨やアクセサリーなどを自作してインターネットで売るといったこともこのタイプに当たります)
注意点 ・企業間での労働時間の管理
・社会保険・労働保険の範囲の把握

といった問題が出てくるため注意が必要
・「副業」部分には原則的には労働基準法が適用されない
・ただし、自社の労働時間と合わせて過重労働での健康問題が出ないようケアすることが重要

特に「企業に雇用される」タイプの副業の場合は、本業先と副業先の企業間で労働時間の管理や社会保険・労働保険の範囲の把握といった問題が出てくるため注意が必要です。(> 副業解禁する際の社会保険に関する注意点)

後者の場合も、自社以外のどこかの企業と雇用関係にあるわけではないため、その「副業」部分には原則的には労働基準法が適用されません。ただそうだとしても、自社の労働時間と合わせて過重労働で健康面に問題が出ないようケアすることは重要です。

さまざまな副業のあり方を想定し、どこまでを容認してルール化し、いかなる形で就業規則に盛り込むのかを検討することが必要となります。


社員の副業を、自社にとってのメリットにつなげるために考えておくべきこと

社員の副業が企業にもたらすのはデメリットばかりではありません。 


副業のメリット1 社員が成長する

副業で社員が自社内ではさせられない経験をすることによって、社員の成長・スキルアップが期待できます。

副業のメリット2 社外の知識・スキルを自社に取り入れられる

自社で手がけている事業とは異なる領域の仕事を副業ですることによって、これまで自社になかった知識やスキルをもたらしてくれるかもしれません。また、副業で新たに築いた人脈が自社の新規事業などに生かされる可能性もあります。

副業のメリット3 人材の確保に役立つ 

副業禁止のままだったら退職していたかもしれない社員を自社につなぎ止める効果もあるでしょう。逆に、副業を認めていることを社外にアピールすることで、それを魅力に感じて入社したいと考える人が出てくる、つまり、採用力の強化につながるかもしれません。

このような「企業にとってのメリット」を積極的に享受するためには、どんな副業が有効なのかを精査して副業ルールに組み入れることや、副業をする社員自身のキャリア展望と、その社員に今後どのようなキャリアパスを踏み、活躍していってほしいかのビジョンをすり合わせることが大切です。

ただ、副業のメリットにばかり気を取られ、楽観的な考えで副業を認めるのは避けるべきです。副業を認めた場合にどのようなデメリットが生じうるのかを多面的に把握し、一つ一つのリスクに備えることが、副業を組織にとってプラスに働かせる上で重要なポイントです。 


就業規則の改定が必要

まず必要となるのは、会社のルールブックともいえる就業規則の上で、副業の禁止を解くことです。 

単純に副業禁止規定の箇所を削除すれば、一応は副業を解禁したことにはなるかもしれません。しかし、社員たちがまったく自由に副業をし始めるとどうなるでしょうか?例えば競合他社に副業で勤務することや、自社と同業での起業は認めるべきでしょうか?そのような副業によって生じる企業へのデメリット、あるいはリスクを回避するためには、社員が行う副業の範囲に一定のルールを設けることが必要となるでしょう。 

副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、副業を行う社員の総労働時間や健康状態を把握し、適切な管理下に置くために、副業を申請・届出させることが望ましいとしています。競業避止といった負の側面を打ち消すためだけでなく、副業を社員の成長、ひいては自社のビジネスに役立てるためにも、申請・届出制にすることは有効です。


副業解禁に当たっての懸念点とその対応

過重労働(労働時間の管理)

社員が副業することで過重労働となり、十分な休息がとれないなど体調面に悪影響を及ぼしてしまうこと、またその結果として本業に支障をきたしてしまう恐れがあります。これは単純に労働時間の絶対量が多くなる懸念です。

さらに、労働基準法で定める労働時間を超えて働いてしまうこと、その場合に生じる時間外割増賃金をどうするかという問題があります。

労働基準法では、1日8時間・1週間40時間が労働時間の上限と定められています。この法定労働時間は、労働基準法38条1項で「労働時間は、事業場を異にする場合においても、労働時間に関する規定の適用については通算する」とされているのです。

【参考】副業“解禁”から1年 踏み切れない企業の足かせ(産経ニュース)


情報漏えい

副業を認めた場合、自社での業務で知りえた機密情報を持ち出して副業に使われてしまうリスクがあります。顧客の情報など目に見える情報を意図的に持ち出すなどといったことは、副業先が同業である・ないにかかわらずあってはならないことです。また、副業先が競合に当たる会社・業種が近い会社だと、企業特有のノウハウや業務プロセスなど目には見えない情報が副業先に自然と伝わってしまうリスクも考えられます。

これを防ぐ対策は2つあります。

1つ目:競合に当たる会社での副業を禁止すること

これは、競合他社と労働契約を結ぶ場合のみならず、競合他社から業務委託で仕事を請けるケースや、競業に当たる事業を自ら立ち上げるようなケースも想定しておく必要があるでしょう。

2つ目:秘密保持契約(NDA)を結ぶこと

もともと入社時に秘密保持に関する誓約書を結んでいる場合は必要ありませんが、副業を始める社員には改めて注意喚起することが、情報漏えいのリスク回避につながります。


社会保険の取り扱い

複数の企業と労働契約を結ぶ場合、社会保険(健康保険、厚生年金保険、雇用保険、労災保険)についての取り扱いに注意が必要です。

詳しくは「社員が副業する際の社会保険に関する注意点」で解説しています。社会保険の取り扱いについて、人事は知識として知っておく必要がありますし、また副業をする社員に対しても副業をする場合の注意点として認識させることが望ましいでしょう。


まとめ

副業には、企業にとってのメリット・デメリット、労働者にとってのメリット・デメリットがあります。副業解禁そのものは不可避の流れですが、何をどこまで許容するのか、いかに社員の副業を管理するかについては会社に裁量がありますので、メリット・デメリットを把握して、会社と従業員の双方によい形で副業を活用することが望ましいでしょう。また、政府主導で副業にまつわる法律を見直し、不備を是正する動きも出てきていますので、そちらの動向もチェックしておきましょう。

【参考】内閣府 規制改革推進会議 会議情報



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この記事を書いた人

hutas編集部

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